律令国家

日本史

律令国家は、7世紀から8世紀にかけて中央集権化を進めるために整備された日本の国家体制です。

大化の改新(645年)を契機に、中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足が中央集権的な改革を行い、唐の律令制度をモデルにしました。701年に制定された大宝律令により、二官八省制の中央政府と国・郡・里の地方行政区分が確立されました。

班田収授法によって土地制度が整備され、全国統一の法律と官僚制度が導入されました。この体制により、日本の政治、経済、社会の基盤が強化されました。この律令制度・律令国会についてまとめました。

律令国家についてよく出る問題

  1. 律と令の定義と役割について説明せよ。
  2. 大宝律令の制定背景とその内容について述べよ。
  3. 大化の改新の目的とその主要な改革内容について述べよ。
  4. 中大兄皇子と中臣鎌足の役割について説明せよ。
  5. 天智天皇の改革とその意義について説明せよ。
  6. 天武天皇の改革内容とその意義について述べよ。
  7. 持統天皇の改革とその意義について説明せよ。
  8. 班田収授法の内容とその目的について説明せよ。
  9. 公地公民制の原則とその意義について述べよ。
  10. 戸籍と計帳の編纂方法とその目的について説明せよ。
  11. 祖(租)、庸、調の三税の内容とその役割について説明せよ。
  12. 衛士の役割とその重要性について述べよ。
  13. 防人の役割とその重要性について説明せよ。

律令制度の概要

律と令の説明

律(りつ)

  • 定義: 律とは、刑法に相当するもので、犯罪の種類とその罰則を定めた法典です。
  • 役割: 社会の秩序を維持するために、犯罪行為に対する罰則を明確にし、法的な抑止力を提供します。具体的には、殺人、窃盗、強盗などの犯罪に対する処罰が規定されています。

令(りょう)

  • 定義: 令とは、行政法や民法に相当するもので、国家の統治や行政運営に関する規則を定めた法典です。
  • 役割: 国家の行政機関の運営方法、役人の任命・昇進・罷免の基準、土地の管理・分配、税制、戸籍の管理、地方行政の仕組みなど、国家の運営に必要な規則を提供します。

大宝律令(701年)

概要

  • 制定年: 701年
  • 制定者: 文武天皇の時代に藤原不比等らが中心となって編纂・制定。
  • 目的: 唐の律令制度をモデルにして、中央集権的な国家体制を確立し、日本全土を統一的に統治するための法体系を構築すること。

構成

  • 律(刑法): 犯罪とその罰則を定めた法典。律には、刑事罰の詳細が規定され、犯罪行為に対する具体的な処罰が明文化されています。
  • 令(行政法、民法): 行政の運営方法や民間の法規範を定めた法典。令には、以下のような内容が含まれます。
    • 官制令: 中央政府の組織と官僚制度の規定。二官八省の構成と役割を定める。
    • 戸令: 戸籍の管理方法と戸籍に基づく人口の把握。
    • 田令: 班田収授法に基づく土地の分配と管理方法。
    • 税令: 祖(租)、庸、調の三税の詳細な規定。
    • 衛士令、防人令: 軍事制度に関する規定。

律令国家の成立

大化の改新(645年)

中大兄皇子と中臣鎌足による改革

  • 背景: 蘇我氏の専横に対する反発が高まる中で、中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足(藤原鎌足)が中心となって蘇我氏を打倒。
  • 内容:
    • 蘇我入鹿の暗殺: 645年、蘇我入鹿が暗殺され、蘇我氏の権力が終焉。
    • 新政権の樹立: 中大兄皇子が皇太子となり、改革を主導。
  • 改革の内容:
    • 公地公民制: 全国の土地と人民を皇族の所有とし、貴族の私有を禁止。
    • 班田収授法の準備: 農地の公平な分配を目指して、土地制度の改革が進められる。
    • 地方行政の整備: 国・郡・里の三段階制の地方行政区分を設置。
  • 意義: 中央集権体制の確立を目指し、日本の統一的な国家体制の基礎を築いた。

天智天皇の改革

改革内容

  • 近江大津宮遷都(667年): 政治の中心を飛鳥から近江(現在の滋賀県)に移し、国家の統治機構を強化。
  • 庚午年籍の編纂(670年): 日本最初の全国戸籍を編纂し、人口と資源の把握を行う。
  • 冠位十二階の再編: 官僚制度を強化し、能力主義に基づく人材登用を進める。
  • 意義: 中央集権化の推進と統治機構の強化を図り、律令制度の基礎を固めた。

天武天皇の改革

改革内容

  • 飛鳥浄御原宮遷都(672年): 政治の中心を再び飛鳥に戻し、天皇権力の強化を図る。
  • 律令編纂の開始: 律令制度の本格的な整備を進める。律令の草案作成が進行。
  • 八色の姓(684年): 貴族の序列を明確化し、官僚制度を強化。
  • 意義: 天皇中心の中央集権体制を確立し、律令制度の基礎を固めた。

持統天皇の改革

改革内容

  • 藤原京の遷都(694年): 日本初の本格的な都城である藤原京を築き、政治・文化の中心とする。
  • 班田収授法の施行(690年): 農民に口分田を与え、収穫に応じた税を徴収する制度を施行。公地公民制を実現。
  • 意義: 中央集権体制の強化と国家の安定を図り、農業生産と税収の基盤を確立。

律令国家の行政組織

中央政府: 二官八省一台五衛府の説明

分類 名称 役割
二官 太政官 政治全般の統括
神祇官 神道儀礼の管理
八省 中務省 天皇の身辺事務、詔勅の起草
式部省 文官の人事、教育
治部省 宗教、外交、祭祀の管理
民部省 財政、税収、民政
兵部省 軍事、防衛
刑部省 刑罰、司法
大蔵省 財政、国家資産の管理
宮内省 宮中事務、天皇家の財産管理
一台 弾正台 行政監察、官吏の監察
五衛府 左衛府 宮中の左側の警備
右衛府 宮中の右側の警備
左兵衛府 宮中の外部の警備(左側)
右兵衛府 宮中の外部の警備(右側)
衛門府 宮中の門の警備

二官

  1. 太政官(だいじょうかん):
    • 役割: 政治全般を統括する最高行政機関。
    • 構成: 左大臣、右大臣、大納言などの高位官僚で構成される。
    • 機能: 法令の制定、国家の重要政策の決定、官僚の任免などを行う。
  2. 神祇官(じんぎかん):
    • 役割: 神道儀礼を司る機関。
    • 構成: 神祇伯を長とする。
    • 機能: 神社の管理、祭祀の実施、天皇の宗教儀礼の補佐など。

八省

  1. 中務省(なかつかさしょう):
    • 役割: 天皇の身辺の事務を管理。
    • 機能: 詔勅の起草、天皇の側近業務。
  2. 式部省(しきぶしょう):
    • 役割: 文官の人事や教育を担当。
    • 機能: 官吏の登用・昇進、大学寮の管理。
  3. 治部省(じぶしょう):
    • 役割: 宗教や外交、祭祀を管理。
    • 機能: 仏教寺院の管理、外交儀礼の実施。
  4. 民部省(みんぶしょう):
    • 役割: 財政や税収、民政を担当。
    • 機能: 税の徴収、地方行政の監督。
  5. 兵部省(ひょうぶしょう):
    • 役割: 軍事や防衛を管理。
    • 機能: 軍隊の編成、防衛政策の策定。
  6. 刑部省(ぎょうぶしょう):
    • 役割: 刑罰や司法を担当。
    • 機能: 刑法の執行、訴訟の処理。
  7. 大蔵省(おおくらしょう):
    • 役割: 財政と国家資産を管理。
    • 機能: 予算の作成、国家の収支管理。
  8. 宮内省(くないしょう):
    • 役割: 宮中の事務や天皇家の財産を管理。
    • 機能: 宮廷儀礼の運営、宮内の管理。

一台

  • 弾正台(だんじょうだい):
    • 役割: 行政監察や官吏の監察を行う機関。
    • 機能: 不正行為の監視、官吏の職務遂行の監査。

五衛府

  1. 左衛府(さえふ):
    • 役割: 宮中の左側の警備を担当。
  2. 右衛府(うえふ):
    • 役割: 宮中の右側の警備を担当。
  3. 左兵衛府(さひょうえふ):
    • 役割: 宮中の外部の警備を担当。
  4. 右兵衛府(うひょうえふ):
    • 役割: 宮中の外部の警備を担当。
  5. 衛門府(えもんふ):
    • 役割: 宮中の門の警備を担当。

地方行政: 国・郡・里の三段階の地方行政区分とそれぞれの役割

区分 統治者 役割
国司(守、介、掾、目) 地方行政の最高単位。中央政府の指示を受けて地方の統治、税の徴収、治安維持を行う。
郡司 国の下位に位置する行政単位。郡内の行政を担当し、国司を補佐する。
里長 最小の行政単位。農民の直接管理、戸籍管理、税の徴収を行う。

国(こく)

  • 役割: 地方行政の最高単位。
  • 統治者: 国司(守、介、掾、目など)が派遣される。
  • 機能: 中央政府の指示を受けて、地方の統治、税の徴収、地方の治安維持を行う。

郡(こおり)

  • 役割: 国の下位に位置する行政単位。
  • 統治者: 郡司(豪族出身者が多い)が任命される。
  • 機能: 郡内の行政を担当し、国司を補佐する形で地方の統治を行う。

里(さと)

  • 役割: 最小の行政単位。
  • 統治者: 里長(さとおさ)が任命される。
  • 機能: 地元の農民を直接管理し、戸籍の管理や税の徴収を行う。

班田収授法

概要: 農民に口分田を与える制度の説明

班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)は、律令制度の一環として導入された土地制度で、農民に口分田(くぶんでん)を与え、一定期間ごとに再分配する仕組みです。農民は与えられた口分田を耕作し、その収穫に基づいて税を納めることが義務付けられていました。

具体的なポイント

  • 口分田: 農民一人ひとりに割り当てられる農地。年齢や性別に応じて支給される面積が決められていました。
  • 分配と再分配: 原則として6年ごとに戸籍が編纂され、口分田が再分配されました。この再分配の仕組みにより、土地の不均衡を防ぎました。
  • 租税: 農民は口分田の収穫から租(祖)という税を納めました。これは、国家の財政を支える重要な収入源となりました。

土地制度: 公地公民制の原則とその目的

公地公民制の原則

公地公民制(こうちこうみんせい)は、土地と人民を国家が直接管理する制度です。この制度のもとでは、全ての土地は国家のものであり、人民はその土地を借りて耕作する形となります。

目的

  1. 土地の公平な分配:
    • 農地を公平に分配することで、土地所有の不均衡を防ぎ、全ての農民に耕作の機会を与えました。
  2. 税収の安定確保:
    • 公地公民制のもとで、農民は口分田を耕作し、そこから得られる収穫に基づいて税を納めました。これにより、国家は安定した税収を確保することができました。
  3. 中央集権の強化:
    • 土地を国家が管理することで、地方豪族の力を抑え、中央政府の統治力を強化しました。

律令国家の社会制度

戸籍と計帳

戸籍の編纂

  • 概要: 戸籍は、全国の人口や家族構成、年齢、性別などを記録する台帳です。国家が人民を把握し、統治や課税の基礎資料とするために作成されました。
  • 6年ごとの編纂: 原則として6年ごとに戸籍が編纂されました。この周期的な編纂により、最新の人口データが常に把握され、土地の再分配や課税の基礎とされました。
  • 目的: 人口管理、税収確保、公地公民制の実施などのために重要な役割を果たしました。

計帳の編纂

  • 概要: 計帳は、戸籍に基づいて毎年作成される台帳で、各戸の経済状況や納税状況を記録しました。
  • 毎年の編纂: 計帳は毎年更新され、各戸の租税義務や負担を明確にしました。
  • 目的: 効率的な租税徴収を実現し、国家財政の安定に寄与しました。

課税制度: 祖(租)、庸、調の三税

祖(租)

  • 概要: 祖(租)は、農地からの収穫に対する税です。
  • 内容: 口分田から得られる収穫物の一部を税として納める。一般的には収穫量の3%程度が課されました。
  • 目的: 国家の主要な財源となり、農業生産の一部を国家に提供することで、財政を支えました。

庸(よう)

  • 概要: 庸(よう)は、労働や特産品を納める税です。
  • 内容: 労役の代わりに布などの特産品を納める。または、一定期間の労働を提供することもありました。
  • 目的: 国家の労働力確保や特産品の提供を通じて、公共事業や国家事業を支えました。

調(ちょう)

  • 概要: 調(ちょう)は、特産物を納める税です。
  • 内容: 各地域の特産物を税として納める。例えば、絹や布、米、鉄など地域ごとに異なる物品が課されました。
  • 目的: 地域ごとの特産物を国家に提供することで、国の経済基盤を強化し、特産物の流通を促進しました。

軍事制度

衛士と防人

衛士(えじ)

概要
  • 役割: 衛士は、律令国家において宮中や都の警備を担当する常備軍です。
  • 選出: 各国から選ばれた青年男子が一定期間、中央に出仕して警備の任に就きました。
  • 期間: 一般的には1年間の勤務期間が設けられ、その後は地元に戻りました。
具体的な役割
  • 宮中の警備: 天皇や皇族、重要施設の警護を担当しました。
  • 都の治安維持: 都の治安維持や犯罪の取り締まりを行いました。
  • 儀式の警護: 宮中で行われる重要な儀式や行事の警護を担当しました。

防人(さきもり)

概要
  • 役割: 防人は、律令国家において特に九州地方の防衛を担当する地方の兵士です。防人は、外敵からの防衛や沿岸警備を担当しました。
  • 選出: 主に東国(関東地方)から選ばれた農民が一定期間、防人として九州に派遣されました。
  • 期間: 一般的には3年間の勤務期間が設けられ、その後は地元に戻りました。
具体的な役割
  • 外敵の防御: 外敵からの侵略を防ぎ、国境の防衛を行いました。特に唐や新羅などの外敵に対する防衛が重要でした。
  • 沿岸警備: 沿岸部の警備や監視を行い、不審船や海賊の侵入を防ぎました。
  • 治安維持: 九州地方の治安維持や緊急時の対応を担当しました。

まとめ

律令国家は、7世紀から8世紀にかけて中央集権化を進めるために成立しました。大化の改新や大宝律令の制定により、律(刑法)と令(行政法、民法)の法体系が整備され、二官八省一台五衛府の行政機構が確立されました。

班田収授法や公地公民制により土地制度と税制も整えられました。この制度により、政治の安定化、中央集権体制の確立、そして法と秩序の維持が実現し、日本の政治制度や文化の発展に大きな影響を与えました。