社会問題調べたメモ的ブログ

正解よりも最適解

晩婚化が出生率低下の原因とは思えない理由

晩婚化が出生率が落ちている原因である。

麻生大臣がそういう仮説を述べたということがニュースになりました。

だから早く結婚をしろ、早く結婚をすれば二人目も産める体力的余裕があるから、子供が増えるよね的なことをおっしゃったそうですが、当然ネット上では賛否両論になりました。

自民・麻生副総裁、少子化の最大の原因を“晩婚化”との見方を示す - ライブドアニュース

もう少し丁寧な言い方をしたほうが良いんじゃないか…と自分も思いますし、本当に晩婚化が子供を産まない理由なのか?ということがふと気になりました。

つまり、体力的な理由なのかな?と。

自分の考えうる範囲で調べてみたところ、言いにくい事ですが、”定年になり高齢者が働かなくなるという当たり前を辞める”ことが実は大切なのでは?と思います。

晩婚化と複数の子供を持つことについて

晩婚化とは

晩婚化(ばんこんか)とは、世間一般の平均初婚年齢が以前と比べて高くなる傾向を指す言葉である。高年齢で結婚をすること、いわゆる「婚期」を過ぎてから結婚することを指して晩婚と言う。俗説として晩婚化は少子化・人口減と関連付けられ、経済悪化の一因とされる。

晩婚化 Wikipedia

晩婚化が進む理由

晩婚化が進む理由について国などが調査した結果として以下のような資料があります。

独身者調査の結果

結婚という選択 人口問題研究所より

未婚者の生涯の結婚意思

結婚をするつもりの人が減り、一生結婚するつもりがない人が増えていることが数値として現れています。

未婚者の結婚の利点に対する考え

結婚に利点があると思いますか、思いませんか?という問いでは、女性は利点があると感じる人が増え、男性は横ばいであることがわかります。

各「結婚の利点」を選択した未婚者の割合

男性も女性も精神的な安らぎと子供や家族を持てることを結婚としての魅力を感じつつ、女性に関しては経済的余裕を持てるという理由が調査を重ねるたびに増えてます。

結婚に利点があると感じる女性が増えている理由はこの点が関係している可能性があります。

未婚者の独身生活の利点に対する考え

独身生活に利点があると感じる人はほぼ横ばいですが、利点はないということが明確になった人の割合は増えていっている印象です。

各「独身生活の利点」を選択した未婚者の割合

自由な行動が男女ともに利点であると同時に、女性は交友関係を保ちやすいという利点があると感じているようです。逆に言えば、結婚することで交友関係が保ちにくくなると考えているということですね。

各「結婚の障害」を選択した未婚者の割合

男女ともに結婚資金が結婚の障害であり、女性は親の承諾も1つの壁になっているようです。

各「独身にとどまっている理由」の選択割合

相手に出会えてないこと、まだ自由でいたいこと、願望がないことが男女ともに独身でとどまっている理由として挙がっています。


 

未婚に関するデータ

なぜ未婚者が増えているのか ?その背景分析? – 財務省 より

結婚相手の条件

男女で相手のどこを重視するのかには違いを感じる部分がありますね。

男性は自身の仕事への理解を示してくれればOKだと考えていますが、女性は男性の経済力や家事育児への能力や姿勢を重視していますので、女性のほうがより現実的に見ていると言ってもいいかもしれません。

独身期と子育て期の時間の使い方

結婚をした後、男性はより仕事に時間を割き、女性は仕事をする時間は確保できず、家事と育児に追われているということが顕著に表れています。

男女で家事育児を分担しようという風潮ではありますが、現実はそう簡単ではないと言えるのかもしれません。


 

二人目の壁について

【夫婦の出産意識調査 2022】

理想の子供の人数は減少

実際に子育てをするようになり、二人目を持つことを躊躇したり断念するケースが増えているようです。

その理由には体力的余裕、経済的余裕というものが上位をしめておりますので、麻生さんのいう「体力的負担に耐えられるうちに」というのは一理ありますが、これは家庭を持ちつつ、子育ても…となると経済的にも時間的にもとてもじゃないけど無理だという物理的な理由であると僕は思います。


 

晩婚化の現状・現在地

日本は晩婚化が進んでいると言います。

国の資料によりますと確かに1995年より三歳ほど初婚年齢が上がっていますので晩婚化は進んでいます。(厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」 )

では、世界的に見てそれはとびぬけた晩婚なのか。

そして、晩婚化と出生率は本当に関係があるのか。

また、日本経済が悪化したことが結婚をしにくくさせているというのは本当なのかを全体的につかむために、それらのデータを1つの表にまとめてみました。

初婚年齢順位順出生率比較表

初婚年齢順位 国名 平均初婚年齢(男性) 出生率 出生率順位 初婚年齢TOP10内出生率順位 gdp(百万USドル) gdp順位 1人当たりgdp(USドル) 1人当たりgdp順位 gdp順位-1人当たりgdp順位
1 スウェーデン 37.5 1.66 137 3 635,664 24 60,816 11 13
2 スペイン 37.2 1.23 197 11 1,426,224 15 30,090 35 -20
3 ノルウェー 36.9 1.48 165 6 482,175 30 89,042 4 26
4 イタリア 36.4 1.24 196 10 2,101,275 8 35,473 28 -20
5 デンマーク 35.3 1.67 136 2 398,303 37 68,202 9 28
6 フランス 35.2 1.83 119 1 2,957,425 7 45,188 23 -16
7 ルクセンブルク 34.8 1.37 184 8 86,768 68 136,701 1 67
8 オーストリア 34.7 1.44 174 7 477,084 31 53,332 14 17
9 オランダ 34.4 1.55 157 4 1,013,520 18 57,997 12 6
10 ベルギー 34.3 1.55 157 5 599,107 25 51,849 17 8
19 韓国 33.23 0.84 206 12 1,810,966 10 35,004 29 -19
28 日本 31 1.34 189 9 4,932,556 3 39,301 27 -24

引用元:世界の男性結婚年齢 国別ランキング・推移
引用元:世界の合計特殊出生率 国別ランキング・推移
引用元:世界の1人当たり名目GDP(IMF)
引用元:世界の名目GDP(IMF)

晩婚化と出生率は比例しないと見ていい

日本人の初婚年齢を世界で比較しますと、実は飛びぬけて高いわけではありません。

世界の先進国が晩婚化傾向にあります。また、出生率を見てみますと、晩婚化が進んでいる国であっても日本より高いことがわかります。

  • 初婚年齢上位5位の平均初婚年齢:36.66歳
  • 初婚年齢上位5位の平均出生率:1.456

そのようなことから、晩婚化と出生率の低下に因果関係があるとみるのは間違いなのではないでしょうか?

日本より晩婚化が進んでいても、日本よりも出生率が高いのですから。

 

この事実を違う角度で見ると、結婚イコール出産という価値観の強い国とそうじゃない国の違いもあります。少子化に舵を切るなら婚外子という選択肢を検討することも現実的なのではないか?ということになってきます。

その代表例がフランスです。

初婚年齢が35歳を超えつつも出生率1.8を超えています。

出生率1.8はアベノミクスで理想と掲げた出生率ですが、初婚年齢が日本より上の国でもそれを実現している国があるという事実は、婚外子を認めるなら晩婚化が進んでいても日本は出生率を伸ばすことができるということになってきます。

 

婚外子は認めにくい、でも出生率を増やしたいとなるなら、他の視点での検討が必要になると思います。

調査内容から、結婚をする理由であったり、第二子を持つ持たないを決定づける要因として”お金”と”時間”がかなり重要なウェイトを占めておりますので、そこを掘り下げるほうが良いのかなと思います。

余談ですが、韓国がヤバい。ってことは日本もヤバい。

余談になりますが、韓国の出生率は要注目だと思います。

日本より晩婚化が進んでいる上に出生率が1を切っています。

引用元のデータでは1を切っている国は世界に5か国あり、韓国はその中でも最下位です。つまり、世界で最も少子化が加速している国でもあります。

危機度合いは日本のはるかに上です。日本が無くなる前に韓国がなくなってますし、韓国がなくなるということはあのエリアのバランスが崩れることになりますから、日本への影響も非常に大きな懸念があります。

経済力と出生率の関係性

経済力の低下が晩婚化や出生率の低下につながっているという仮説が日本国内では散見されます。

それは本当だろうか…ということで晩婚化が進む国の名目GDPと一人当たりのGDPも入れてみて数字を比較してみたところ、一歩踏み込んだ仮説に近づくことができた気がします。それは…

  • 国の名目GDPは高いが一人当たりのGDPは高くない国は出生率が低いように感じる(ただしフランスは別)

ということです。

国単位の名目GDPの順位と一人当たりの名目GDPの順位の差し引き(名目GDP順位-一人当たり名目GDP順位)がマイナスになる国と、差し引きがプラスになる国でグループを分けて、その2つのグループで出生率の平均を取ると次のようになります。

  • 順位差がマイナス:出生率1.296(フランスを除くと1.163)
  • 順位差がプラス :出生率1.531

国のGDPの規模に対して1人当たりのGDPが低い国ほど出生率が低いという特徴があるように見えます。

日本はもちろんのこと、晩婚化が進み、なおかつ出生率が低いスペインやイタリアも同様の現象が見られます。

 

これが示しているのは労働人口に負荷がかかりまくると出生率は落ちてくるということですし、もっとハッキリ言えば生産活動に関与していない人が増えるほど出生率が落ちる可能性があると言えます。

だからもっと多くの方を生産活動に参加させることが大切なのでは?となりますし、それは失業率を減らすということも1つですが、ボリュームで考えると、定年して隠居生活をしている方が圧倒的に多いのですから、その方たちに働いてもらうという考え方が大切なのでは?と思うのです。

 

今の日本は全人口に対して少ない割合の労働人口しかいないのに世界3位のGDPをたたき出していることになります。これって異様なことです。

でも、働いていない人たち(主に定年後の人)が労働人口よりも多いので、人口で割った一人当たりのGDPで見ると一気に順位が落ちます。

働いてもまったく豊かにならないように感じるのも無理がないわけです。

実際に働いているわりに豊かになってませんから、お金はないし、少子化が進むのに定年で働かない人が増えるのですから、将来ヤバいんじゃないか…と不安に感じるのも無理はないとも思います。

 

その結果、結婚なんて無理だ…と思ったり、二人目は無理だと感じる人が出てきたりして、出産率の低下につながっているのではないか?と思います。


 

まとめ

晩婚化が出生率の低下につながっているのでは?という麻生さんの説は、残念ながら間違いだということになります。

日本よりも晩婚化が進んでいる国でも出生率が日本よりも上という国はあるためです。

また、早く結婚すれば二人目を生むようになるのかというと、そういう事でもないように感じます。

自由な時間がなくなるほどの仕事をして、なのに実入りはイマイチ伸びない、それがいつ改善されるのかも見えないから、結婚も二人目も考えにくい人が増えているからこその今だと思うのです。

 

晩婚化を解消して少子化改善を本気で考えるなら、次の2点を真剣に検討することが大切なのでは?ということになってきます。

  • 婚外子を認める
  • 定年、年金受給での老後生活という考え方を転換する

この2点が晩婚化と低出生率が進む日本における現実的な施策になると思います。

婚外子を認めるというのは日本人の価値観の大きな変化を求めることになりますのでかなり難しいかもしれませんので、定年や年金と言った社会制度を変える方向に舵を切る方向がまだそれよりは簡単だと思います。

 

定年以降の非労働人口世代に生産活動に復帰してもらうこと。

できれば年金生活を最低限にして、社会保険なども大いに自身の稼ぎから天引きしてもらうようにして、現役世代に時間的余裕と金銭的余裕を生み出す。

そうすることで、第二子を設けようと思ったり、結婚しようと思う人が出てくるのではないでしょうか?

今のような働けど働けど、どんどん増税や増社会保険で手取りが削られるような状況では、時間も足りない、手取りも減っていきどうなるのかわからない…で第二子どころじゃないし、結婚そのものを避けざるを得なくなるのも無理はないと思います。

 

年配世代に社会復帰を促すなんてことをすれば大きな議論になるとは思いますし、選挙になると与党は大敗を喫することになるかもしれませんが、それぐらいの大きな改革を決断してこそ異次元の少子化対策と言えるのではないでしょうか?

まさに今までと違う次元というレベルの少子化対策なのですから。

 

その2点を避けて国を維持するための人口を増やすとなると、移民を大量に受け入れるという選択肢が現実味を帯びてくると思います。